鉄(iron)と鋼(steel)と鋳鉄(Cast Iron)の違い

目次

鉄と鋼と鋳鉄の違いのまとめ

なにか 強度 主な用途
鉄(iron) 純度の高い鉄
柔らかい
弱い、実用には不十分 電磁鋼板、特殊用途(磁性材料など)
鋼(steel) 鉄に炭素(0.02%~2.1%)を加えた合金
炭素量や熱処理で硬さを調整可能
強度・靱性が高く、幅広く利用可能 建築、機械、車両、工具、刃物、ステンレスなど
鋳鉄(Cast Iron) 鉄に炭素(2.1%以上)を加えた合金 硬くて脆いが、鋳造しやすく耐摩耗性に優れる 鉄鍋、エンジンブロック、マンホール蓋、ボイラー部品

鉄は、素材のベース。

鋼は、鉄を実用的に進化させた合金。

鋳鉄は、炭素を多く含む鉄合金で、鋳造しやすく、硬くて耐摩耗性・耐熱性に優れるが、脆い。

鉄とは

  • 工業的に用いられる純鉄は炭素をほとんど含まず、柔らかい。
  • 単体ではあまり強度がなく、実用には適さないことが多い。

製品例

  • 電磁鋼板(変圧器・モーターコア)
  • 実験用・研究用の純鉄材
  • 特殊用途の精密部品

鉄の歴史的意味

石器時代 → 青銅器時代 → 鉄器時代

軍事革命

鉄の剣や槍、鎧は青銅製より強く、戦争の様相を変えました。
これにより、鉄を安定供給できる国家が優位に立ちました。

農業革命

鉄製の犂(すき)や斧により森林伐採や耕作が進み、農業生産力が拡大。
人口増加と都市文明の発展を支えました。

鋼(はがね)とは

  • 鉄に炭素を0.02%~2.1%程度含ませた合金。
  • 熱処理や成分調整によって強度・硬さ・靱性をコントロールできる。
  • 建築・自動車・機械・工具など、幅広い用途で利用される。

製品例

  • 建築用鉄骨、鉄筋
  • 自動車の車体・エンジン部品
  • 鉄道レール
  • 工具類(包丁、ハサミ、ドリル)
  • ステンレス製品(シンク、医療器具)

ステンレス・・・鋼の一種。鉄にクロムが10.5%以上含む合金。錆びにくい。

鋼ができるまでの流れ

1.原料の鉄鉱石を採掘

2.高炉で効率よく溶かすために鉄鉱石を細かく砕く

3.高炉に鉄鉱石、コークス(炭素の材料)、石灰石を入れ、銑鉄(せんてつ)ができる

4.転炉や電気炉で酸素を吹き込んで炭素を燃焼除去し鋼ができる

5.鋼は用途に応じて加工される

鋼の歴史的意味

中世の日本

日本刀は、「たたら製鉄法」により玉鋼(たまはがね)が作られ、折り返し鍛錬によって強靱で美しい刀剣が生まれました。

18世紀~19世紀にかけて、製鋼技術が大きく進歩しました。

鋼は鉄道レール、橋梁、造船、武器、建築(摩天楼の鉄骨構造)など、近代文明を象徴するインフラの中心素材になりました。

現代

鋼は20世紀以降、国力の象徴と見なされ、各国が製鉄・製鋼業を重視しました。

高張力鋼、ステンレス鋼、特殊鋼など多様な鋼種が開発され、航空機、原子力、化学プラントなど産業全般を支えています。

鋳鉄(ちゅうてつ)とは

  • 鉄に炭素が多く含まれると、硬いが脆く、溶かして型に流し込む「鋳造」に適した性質になります。

  • そのため鋳物(いもの)製品として多用されてきました。

製品例

  • 日常生活:鉄鍋、ダッチオーブン、ストーブ、マンホール蓋

  • 自動車・機械:エンジンブロック、シリンダーヘッド、ギア、工作機械のベッド

  • インフラ:水道管、下水管、建築部材

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