元請けSIerの収益構造 (丸投げに近い状態の場合)

目次

元請けSIerの収益構造

※SIerがプロジェクト管理のみを行い、実務をすべて下請けに任せている丸投げに近い状態の場合です。

SIerの粗利(売上総利益)
   = クライアントからの受注金額(高) - 下請けへの発注金額(固定単価)(低)

このスプレッド(差額)で稼ぐというのはSIビジネスの本質の一つです。

自社の正社員(高給な幹部・中堅社員)がコーディングをすると、その人件費がプロジェクトの原価に乗ってきます。

一方、下請け(協力会社)のエンジニアを使えば、単価を低く抑えられるため、原価を下げつつ、元請けとして高い金額をクライアントに請求できます。

このパターンでは、自社社員はプロジェクトを回すための管理コストとして扱われ、粗利を計算した後に差し引かれます。

営業利益 = 粗利(売上総利益) - SIer自社の人件費(管理要員・PMなど)

 

ポイント

  • この機能を○○万円で作れという請負契約にすると、工数が増えても発注金額は変わらない
  • 自社より安い単価で発注できる
  • リスクを下請けに転嫁できる
  • 自社社員だと残業・炎上すればするほど原価が膨らむが、下請けならそのリスクを押しつけられる
  • スケールしやすい(人が足りなければ下請けを増やすだけ)
  • クライアントへの請求力の高さとパートナーへの発注単価の低さの両方の差で稼ぐビジネス

 

自社社員でやる場合との比較

コスト リスク 管理
自社社員 給与・社保・福利厚生など変動 工数が増えるとコスト増 難しい
下請け 契約単価で固定 超過分を下請けに負わせられる 遅れたら下請けの責任にできる

SIerの人件費の位置づけ

※SIerがプロジェクト管理のみを行い、実務をすべて下請けに任せている丸投げに近い状態の場合です。

SIerの営業利益
   = 粗利 - SIer自社の人件費(管理要員・PMなど)− その他販管費(家賃・交通費など)

自社社員がコーディングをすると:
コーディング要員の人件費
 → 売上原価に算入される場合もある
 → 粗利が下がる

一方、管理だけなら:
PM・管理要員の人件費
 → 販管費扱い
 → 粗利には影響しない

 

粗利は高い方が良い

人件費は同じでも粗利が高ければ結果は異なります。

ケースA(低粗利)
売上100 − 原価70 = 粗利30
粗利30 − 人件費30 = 利益0

ケースB(高粗利)
売上100 − 原価40 = 粗利60
粗利60 − 人件費30 = 利益30

 

粗利が高い場合のメリット

  • 利益が出やすい
  • 粗利がバッファになり赤字になりにくい
  • 価格競争に強くなり、値引きしても粗利が残る
  • 人件費を吸収でき、人を増やせる
  • 余剰利益を投資に回せて、開発投資できる

 

本質

SIビジネスは人を増やすことで売上を増やすモデル(労働集約型)です。

低粗利 × 人を増やす
= 人件費増加 > 粗利増加
= スケールすればするほど苦しくなる
高粗利 × 人を増やす
= 人件費増加 < 粗利増加
= スケールするほど利益が積み上がる

 

粗利率の業界水準

タイプ 粗利率の目安
元請け大手SIer 40〜60%。クライアントへの請求力が高く、下請けへの発注単価を抑えられる。
二次請けSIer 20〜35%。元請けから値切られ、さらに下に投げる。
三次請け以下 10〜20%。ほぼ人を出すだけ、利益が薄い。
自社製品・サービス系 60〜80%。一度作ったものを繰り返し売れる。
パッケージ・SaaS 70〜90%。限界費用(※)がゼロに近く、月額で積み上がる。

SIerは、人を売るので売上に比例してコストが増えます。

※限界費用とは、生産量を1単位増やしたときに、追加でかかる費用のことです。
例:ユーザが一人増えてもコピーを作るコストはほぼゼロです。

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